人間は親切か !?

「帰納的推理」ってご存じですか?

「一つの事例から法則を導き出す
推論の仕方である」

なんて言ってみても
かえって解らなくなりますよね。

たとえ話をします。

あるところに一羽のガチョウがいました。

農家で飼育されていたのですが、
臆病なガチョウは初め、
なぜ農夫がエサをくれるのか
疑いの気持ちでいっぱいでした。

「なにかたくらんでいるにちがいない!」

数週間が過ぎて、
毎日エサをもらっているガチョウは
次第に農夫を好きになり
信頼するようになりました。

「この農夫は親切な人だ!」

その後もエサをもらっているうちに、
ガチョウの気持ちが変化してきました。

「人間って、親切な生き物だ!」

数日後、ガチョウは売られて
親切なはずの人間の胃袋におさまりました。

これは、農夫にエサをもらったガチョウが、

「この農夫は親切だ」から
「人間は親切だ」という結論まで、
帰納的推理を働かせて
誤った結論に至った一例です。

「帰納的推理のワナ」と呼ばれています。

ガチョウに限らず、
人間だって同じ過ちを犯します。

何かの都合で土地が値上がりします。

初めは偶然だと思っていた人たちも、
値上がりが続くうちに
「土地を買うと値上がりする!」
という結論にいたります。

出来るだけのお金をかき集め、
借りられるだけ借金して
土地を買いあさります。

最後はどうなったか、
まだ記憶に新しいところですね。

この習性を逆手に取って
こんな一発屋の詐欺も可能です。

大きく乱高下しそうな株を選びます。

100万人にあてて、
1ヶ月後の株価の予想を発信します。

50万人に対して「上昇」と、
残り50万人には「下落」と送ります。

1ヶ月後、ふたたび株価の予想を発信します。

ただし、前回予想が的中した方の
50万人に対してのみ、
その半数の25万人に「上昇」と
残り25万人には「下落」と送ります。

1ヶ月後・・・

これを何度か繰り返すと、
予想を送り続けている人
つまり偶然ですが、
当たりの予想を送った人たちにとって
もはや、あなたは予言者です。

適当な頃合を見計らって、
何を売りつけようと思うがままでしょう。

その後はほとぼりを冷まして、
香港あたりで悠々自適という訳です。

いかがでしょうか?
中学校の数学の時間に
申し訳程度に教わった「帰納法」が、
あなたを奈落の底に突き落としたり、
一攫千金の夢を与えてくれたり、
笑えないお話でした。